タレントではないが、個性的なキャラクターを前面に出し自社のCMに出演する「社長」がいる。派手なタキシードを着て、「スーパーミリオンヘアー」を頭に振りかけ、薄毛が黒くなっていく様子をCMで実演しているのは、『ルアン』の代表取締役社長・阿部稔さんだ。阿部さんに、社長自らがCMに出演するようになった経緯を聞いた。
「私は若い頃から、別荘の販売などの商売をしてきました。そんな中、40代を目前にして髪が薄くなってきたので、その対策用に何かいいものはないかと探しているとき、髪が増えたように見せる繊維素材と出合ったんです」(阿部さん・以下同)
「これだ!」と思った阿部さんは、その後、研究を重ね、1986年に独自の「スーパーミリオンヘアー」の製造を始める。
「これはレーヨン繊維に特殊加工を施した細かい繊維を組み合わせたもの。その繊維が髪の下に沈み込むことで薄毛を隠すという画期的な仕組みです。それまでは、カツラでも育毛剤でもない増毛法はなかったので、販路を見つけるのに苦労しました」
目の前で頭に振りかけて見せれば仕上がりが自然で、服についても払えば汚れず、シャンプーで落とせることが一目瞭然だが、言葉でいくら説明しても理解してもらえない。
「カラーも14色あり、1回の使用料も男性で100円、女性で20~30円と比較的安価なのですが、当初は商品のよさを理解してもらえず、返品ばかりが続きました。そこで北海道から沖縄まで、実演して回ろうということになり、全国を5年かけて回りました。その際、地方ごとにテレビCMも流したのですが、その甲斐あって、少しずつ商品のよさが浸透し始めたのです」
CMにタキシード姿で出演することになったのは、韓国の代理店の担当者との食事の席で、阿部さんがたばこを消すマジックを披露したのがきっかけだ。
「その担当者がとても面白がってくれて、『社長、それをCMに使いましょう』と言うので、芸人風のタキシードを用意して撮影をしたのです。残念ながらそのときは長く演じすぎてしまい、マジック部分はカットされました。で、も、そのCMを韓国から逆輸入して、テレビCMとして使ったのが最初です。だからちょっと芸人風なんですね(笑い)」