カメラ事業を売却したオリンパス
将来性の低い事業を捨てるという動きはカメラ業界でも起きている。スマホのカメラの高性能化に伴い、デジカメの市場規模は急激に縮小している。デジカメ出荷台数はピークだった2010年で1億2100万台だったが、2020年は890万台と7%にまで落ち込んだ。
そんななか、オリンパスは2020年6月に創業事業であるカメラ事業を売却した。マネックス証券チーフ・ストラテジストの広木隆氏はこういう。
「なくなっていく市場にこだわってもしょうがないと判断したわけです。幸い、オリンパスはシェア70%という内視鏡事業を持っていたので、撤退を決断できた」
世界最大のフィルムメーカーだったイーストマン・コダックは、デジカメが普及し始めてもフィルムにこだわり続けたため、そのまま倒産した。その轍は踏まないという判断である。
「オリンパスは技術力に定評がありますが、ガバナンス(企業統治)は最低でした。歴代経営者が粉飾決算を続けていたのが発覚した後も内部では揉め事が続いていましたが、2019年に“物言う株主”のバリューアクト・キャピタルから外国人の取締役を受け入れ、そこから株価が急騰した。そして、2020年にカメラ事業を売却。外部の血を入れることで、ようやく主力事業を完全に捨てることができたということなのでしょう」(同前)
生き残るためには、主力事業さえ捨てなければならないこともある。
※週刊ポスト2021年9月10日号