仮に落としたとしても失うものが多くない
スマホ生活のデメリットと感じる部分は他にもあります。スマホユーザーが常にSNSの通知をチェックしている様子や、ずっとスマホを握りしめてゲームし続けている様を見ると、「あぁ、これは中毒性があるんだな、オレはこんなツールを持たないで良かった。多分、自分も膨大な無駄時間を過ごすことになっていたはず……」と思ってしまいます。
そんな私からすると、電車の中で目の前の席に座る7人全員がスマホに目を落としている姿は、日常茶飯事な不気味光景です。自分はあんな風景の一部になりたくない。犬の散歩をしている人もスマホを見ながらで、犬があっちへ行ったりこっちへ行ったりしている。すれちがう時はこちらも犬の動きに合わせてぶつからないように歩かなくてはいけない。歩きスマホは、本当に困ったものです。
スマホがあればNetflixもHuluもDAZNも、いつでも好きなものを見られて楽しいのは分かりますが、外にいる時や移動中はそういったことはできない時間、と割り切って新聞を読んだり本を読んだりする方が、知識の差別化ができると思います。また、スマホで常時ネットニュースばかり見ていると、いわゆる「バズってるネタ」や「自分が好きそうな記事」ばかり目についてしまい、知識の広がりが制限されるのではないでしょうか。
あと、ガラケーの良いところは、変な言い方ですが、「仮に落としたとしても失うものが多くない」という点にあります。スマホはとにかく様々なものがその1台に詰めすぎ状態になっており、それを失うと人生のかなりの部分が失われてしまう感覚に陥るのではないでしょうか。ガラケーであれば、電話番号と過去のSMSぐらいしか失うものはありません。これは本当に気楽です。
かくして2021年ももうすぐ第4四半期に入ろうとしていますが、まだスマホに変更するインセンティブをまったく感じない自分がいます。だから、同様のガラケーユーザーの皆さんも、一緒にガラケーを使い続けていきましょう。ただ、私がUber Eatsの配達員になった時は道のナビ用にスマホを買おうかと思っています。
【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。