──将来、ライオンが目指す方向性は?
掬川:日本生まれでアジア育ちの世界企業になる、ということを標榜しています。当社製品の主な市場は日本、東南アジア、北東アジアです。日本発の企業というアイデンティティーを維持し、強みとして活かしていこうと考えています。
真面目で誠実な企業文化も、良き伝統として堅持していかなくてはなりません。当社のハミガキのミント香料は、ほぼ100%天然ミントを使用しています。毎年、技術者が収穫期にアメリカのミント畑を訪れ、直接買い付けています。そこまでこだわってハミガキを作っているところはほとんどないと思います。
そうした努力によって、いつも変わらないハミガキの香料を提供できるのです。経営効率的には良いとは言えませんが、だからこそ、日本の真摯なモノづくり企業として、広くアジア各国の生活者に「ライオン」ブランドが受け入れられているのだと思います。
【プロフィール】
掬川正純(きくかわ・まさずみ)/1959年、神奈川県生まれ。1984年東大農学部卒、ライオン入社。2012年に取締役、執行役員、ヘルス&ホームケア事業本部長。2016年に常務取締役、執行役員、2018年に代表取締役、専務執行役員などを経て、2019年より現職。
【聞き手】
河野圭祐(かわの・けいすけ)/1963年、静岡県生まれ。経済誌編集長を経て、2018年4月よりフリーとして活動。流通、食品、ホテル、不動産など幅広く取材。
※週刊ポスト2021年10月8日号