日本経済はようやくコロナ自粛の長いトンネルを抜けた。ワクチンの2回目接種率が国民の7割に達し、ピーク時には全国で1日2万5000人(今年8月)を超えた感染者数は今やその1%の300人台まで激減した。
10月25日からは首都圏でも飲食店への時短要請が全面解除されて客足は回復に向かい、航空機の予約は10倍、国内旅行の予約も倍増、「ヒト、モノ、カネ」が動き出し、人手不足が顕著になっている。
日本経済は欧米や中国より「周回遅れ」の“一人負け”と言われたが、ワクチン接種が先行した米国経済の回復ぶりを辿るとこれから日本で起きるシナリオが見えてくる。
米国ではワクチン接種率が5割に迫った今年春から消費が急拡大し、3月の小売売上高は前月比9.8%の伸びで、自動車、家電、衣料、スポーツ用品などが売れまくって軒並み2桁増。4月には全米の飲食業の売上高がコロナ前を上回り、その後も増加、人手不足が深刻化している。
それに伴って企業は設備投資を増やし、実質GDPは日本がマイナス成長だった今年1~3月期に6.4%増(年率換算)、4~6月期も6.6%増となり、株価(ダウ平均)も史上最高値を更新した。
日本経済はこれからそうした「V字回復」に向かう可能性がある。経済評論家の鈴木貴博氏(百年コンサルティング代表)は、まず「リベンジ消費」が始まると指摘する。
「日本にはコロナ禍で外食や旅行などができずに蓄えられた“強制貯蓄”が約20兆円あるとみられています。巣ごもりで使えなかったお金を自粛解除で飲食や旅行、コンサートなどで惜しみなく使おうというリベンジ消費はアフターコロナにおける世界的な傾向です」
コロナ禍で解雇や休業が深刻化したものの、全体で見ると消費を控えていた分、家計にお金が貯まっている。日本の家計金融資産は今年6月末に過去最高の1992兆円に達し、そのうち現預金は前年比4%増、株や投資信託は30%近く増えているのだ。