名古屋に根付く喫茶店の「モーニング文化」を全国各地に普及させた立役者が、名古屋市発祥の喫茶店チェーン「コメダ珈琲店」だ。
コメダ珈琲店は1968年に創業され、2003年以降、全国へと出店を拡大。2019年6月に全47都道府県への出店を達成した。店舗数は現在927店(2021年10月末時点)に上る。
なぜ名古屋から全国にこれだけ急ピッチで進出、拡大できたのか。名古屋市出身で、喫茶店の経営と生活文化に詳しい経済ジャーナリストの高井尚之氏が語る。
「近年の急拡大の理由の一つに、9割超が直営店のスターバックスとは対照的に、フランチャイズチェーン(FC)店が9割以上を占めることが挙げられます。全国から出店オファーが寄せられる中で、直営店よりもFC展開のほうが開店までのスピードが速い機能的な強みがあります。
加えて、名古屋めしブームを追い風に“他地域がイメージする名古屋のお得な喫茶店”の象徴になっている情緒的な強みを持ちます」
その魅力の象徴がモーニングサービスだ。開店から午前11時まで、ドリンク代のみでトーストと1品(「定番ゆで玉子」「手作りたまごペースト」「名古屋名物おぐらあん」のいずれか)が付いてくる。
「新聞・雑誌は読み放題、コーヒー前売り回数券を買うと1杯分お得になる。モーニングもそうですが、名古屋の人はオマケと元をとるのが大好きなんです。全国展開しても“お得感”はそのままにメニューを提供している。それが日本中の顧客にウケたのでしょう」(同前)
コロナ禍ではコーヒーチェーン店も大きな打撃を受け、各社が苦戦を強いられているが、コメダホールディングスは10月13日に発表した2022年2月期中間決算でも売り上げ収益は21.6%増(前年同月比)で過去最高を記録した。
「注目すべきは既存店の売り上げが伸びていること。地元住民が利用しやすい生活圏にある店舗で、学生から主婦、通勤前後のサラリーマンなどの根強い常連客がついていることが強みになっている」(経済誌記者)
※週刊ポスト2021年11月19・26日号