新型コロナウイルスの感染拡大以降、私たちの生活は大きく変わった。不便を強いられたことも多かったが、一方でオンライン会議や食事のデリバリーサービスなどが普及し、以前より“効率的に”暮らせるようになった側面もある。そうした生活が続いたことで、普段からコストパフォーマンスを重視するようになった30代独身男性が、思わぬ悩みに直面しているという。いったい何があったのか。フリーライターの吉田みく氏が話を聞いた。
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コロナ禍ではさまざまな自粛が求められてきたが、そのなかでも特に影響が大きかったのは、飲食店での酒類提供自粛ではないだろうか。11月も半ばを過ぎ、これから忘年会・新年会シーズンに本格突入するが、飲食店がコロナ前のような賑わいを取り戻すまでは、まだ時間がかかるかもしれない。
実家で両親と同居する都内在住の会社員、拓也さん(仮名・33歳)は、忘年会に誘われたことがきっかけで、友人たちとトラブルになったことを話してくれた。
「飲食店の営業自粛がきっかけで、自宅で飲む機会が増えました。オンライン飲み会も最初のうちは慣れませんでしたが、今では楽しく参加しています。また、飲食店で飲むよりも安く済ませられるのも魅力の一つではないでしょうか」(拓也さん、以下同)
拓也さんはSNSを通じてオンライン飲み友作りをするほど、オンライン飲み会にハマっているという。様々な地域の仲間とオンライン上で交流したことで、視野も広がったそうだ。実母が作った料理をつまみ、ネット通販で安く購入した缶ビールを飲む生活の甲斐もあり、「貯金額は過去最高額に達した」と、拓也さんは鼻高々に語っていた。
東京で緊急事態宣言が解除となった頃、学生時代の友人たちから「久しぶりに居酒屋で忘年会しよう!」とグループチャットで誘われたそうだ。しかし、拓也さんは嬉しいよりも気が重いほうが大きかったという。
「自宅で飲むほうがコスパ良いことに気づいてから、正直、居酒屋で飲む魅力を感じなくなってしまいました。缶ビールなら300円も出せば買えますが、居酒屋なら1杯500円はしますよね? 会話したければオンラインで良いと思っています。それと、我が家には身体の弱い両親もいますので、密になりやすい環境は心配になります……」
拓也さんは、コロナ禍で魅力に感じたオンライン飲み会を友人たちに提案。併せて、両親の事情も伝えたという。その結果、意外な言葉が友人たちから返ってきたそうだ。
「『場がしらけるわー』と言われました。友人たち曰く、緊急事態宣言解除後だし、感染対策をきちんと行っている店を選べば問題ないそうです。その話を聞いたら、確かにそうだなって思ったんですが、やはり金銭的な部分で乗り気になれなくて……」