新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン」が世界の金融市場に混乱をもたらしている。株価や原油価格が急落する中、為替相場も激しい値動きに見舞われ、ドル円相場は11月25日の1ドル115円台の高値から、翌26日には一気に113円台まで急落。その後一時112円台を付ける場面もあるなど、それまでの円安トレンドから一転、円高基調が続いている。
為替市場に詳しいグローバルリンクアドバイザーズの石井千晶氏は、この“オミクロン・ショック”の急激な相場変動の裏側には、「一部の海外勢によるドルの売り浴びせがあった」と指摘する。一体何が起きていたのか、石井氏が解説する。
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世界の株式市場が急落した11月26日。前日の25日は感謝祭で米国市場が休場、26日も半日の短縮取引となり、薄商いの中でのこの日の急落は、金融市場に大きな動揺を与えた。報道などでは、南アフリカで感染力が強いとされる「オミクロン株」が発見されたことを受け、移動制限や都市封鎖(ロックダウン)などへの懸念からリスク回避の動きが強まったことが要因だとされている。しかし、為替市場参加者の動向に目を向けると、少し異なる景色が見えてくる。
そもそも、11月25日までの為替市場は、コロナ後の回復が視野に入り、ドル円相場は1ドル115円台前半を中心に推移する円安基調となっていた。市場関係者も強気で見ていたようで、IMM(シカゴマーカンタイル取引所の一部門)で取引される通貨先物の投機筋ポジションを見ても、円売りをしていた投資家が多かったことが推察できる。
しかし、急落当時の1時間足のドル円チャートを見ると、日本時間の午前8時ジャストにそれまでとは反対にドル売りが仕掛けられている。オミクロン株の発見が売られた要因と見られているが、実はこのニュースが出たのは、日本時間の午前8時ジャストではなくその数時間前。つまり、オミクロン株のニュースが出た時点で為替相場は何の反応も示していないのに、その数時間後に急激に売られるという不自然な動きをしていたのだ。