2000年代以降、DVDやブルーレイディスクが登場・普及したのに伴い、徐々に姿を消していった「VHSのビデオテープ」。VHSとは「Video Home System」の略で、かつては多くの家庭にVHSテープの録画・再生用デッキがあり、テレビ放送を録画して何度も見たり、レンタルビデオ店で借りてきたテープを見たりした経験のある人も多いのではないだろうか。
すでに現在は、メディアとしての役割を終えたかに思われていたが、一部ではその人気が静かに再燃しているようだ。2020年にはSHIBUYA TSUTAYAがVHSテープのレンタルコーナーを拡充、フリマサイトでは高額で取引されているタイトルも散見される。ストリーミング配信サービスも普及しデジタル全盛の今、なぜVHSを求める人がいるのか。ユーザーたちの声を聞いた。
VHSでしか見られない作品を見たくて
コロナ禍でこれまでよりも映画やドラマをよく見るようになったという20代女性・Aさん。時代を遡って作品を見ていくうちに、配信はおろかDVD化さえされていない作品の存在に気が付いた。
「現在40代の男性アイドルが10代の若い頃に出演したドラマが見たくなったのですが、配信でもDVDでも見つからない。『今どきそんなことあるの?』というのが正直な感想でしたが、フリマサイトにVHSテープで売られているのを見つけました。5巻で2万円以上という高価格にびっくりしました」(Aさん)
その後、知り合いから、そのドラマのVHSテープをレンタルショップで借りることができると教えてもらったAさん。ただし自宅には再生するためのビデオデッキがなかったため、フリマサイトで数千円の中古ビデオデッキを購入した。
「そもそもレンタルをあまり利用しないので、レンタルコーナーは新鮮で楽しく、お目当ての作品以外も借りることにしました。ただちょっとショックだったのは、実はレンタルショップでビデオデッキもレンタルできたということでした……。まあこれを機に、VHSにしかない掘り出し物をたくさん視聴しようと思います」(Aさん)
AさんはVHSならではの“味わい”も感じたという。
「確かに画質は良くはないけれど、当時の雰囲気を味わうにはむしろその方がいいと思いまいした。映像の乱れも味があるなと思ったし、『早戻し』ではなく『巻き戻し』という感覚も新鮮でした。会社の上司との雑談で『VHSを借りた』ことを話すと、『返却する時は、次に借りる人のために巻き戻ししてから返すことがマナー』と懐かしそうに教えてくれ、そういうものなんだあ、と感心しました」(Aさん)