各区によって、様々な特徴がある東京23区。1人あたり平均所得のトップは港区で1217万円(2019年)。ついで千代田区(1081万円)、渋谷区(873万円)と、やはり都心エリアには富裕層が多く住んでいるイメージがある。
とはいえ一口に「年収1000万」と言っても、夫婦で協力して稼ぐのと、一家の大黒柱がひとりで稼ぐのは少し違う。「世帯年収1000万」と「1人あたり年収1000万」のどちらも、ほとんどすべての都心・山の手エリアに存在するが、港区には「1人あたり年収1000万円」の世帯が多く、ここからは単身の経営者などが、利便性や“見栄”で港区を好んでいることが透けて見える。
一方、練馬区は「世帯年収1000万円」の家庭が特に集中している。高所得の共働き世帯は練馬区を選んでいるということだ。練馬区の高所得者層は、石神井公園や大泉学園といった閑静な高級住宅地を好むといわれる。そのほか、高級住宅地といえば、世田谷区の「成城」、大田区の「田園調布」などが知られるが、高級住宅地の中にも“ランク”がある。東京23区研究所所長で都市開発コンサルタントの池田利道さんはこう話す。
「東京で本当に由緒正しい高級住宅地といえば『城南五山』でしょう。目黒駅から品川駅にかけての山手線南側に連なる地域で、池田山、御殿山、島津山、花房山、八ツ山の総称です。江戸時代の大名屋敷からの歴史を誇っており、長者丸(品川区)や西郷山(目黒区)、西片(文京区)、南平台(渋谷区)も同様に、本当にハイソな住宅地だと言っていい。
田園調布、成城学園、等々力、浜田山などは有名ですが、実はこの辺りは、昭和初期に私鉄の開通に合わせて開発されたばかりの新参者です。その後、この流れに乗って開発されたのが、西武池袋線沿いの石神井公園や大泉学園、東武東上線沿いのときわ台など。ここは“高級”というより“瀟洒”“閑静”といった表現が適当ではないでしょうか」
そもそも、こうした都心・山の手エリアは、暮らしやすく利便性も高いが、長く住み続ける場合には、下町にはあまりないリスクを考える必要がある。林立するタワーマンションは、老朽化すれば建て替えはほぼ不可能なほか、2019年の台風で武蔵小杉のタワーマンションが停電した際、高層階の住人が家から出られなかったように、災害時の不安もぬぐえない。
「調査の結果、世田谷区在住の高齢者は働く意欲が低く、地域活動への参加も不活発だとわかりました。引きこもりがちになれば老化が早まり、介護保険を利用せざるを得ない人も増えているのが実情です。こうした傾向は世田谷区だけでなく、その他西部山の手全域に共通して指摘できます」(池田さん)