動画配信サービスやYouTubeなどが定着し、そこに搭載されている「倍速視聴」の機能を使用する人も多くなった。ドラマなどの内容を短時間で把握することができたり、“推し”タレントが出演する部分以外を倍速で飛ばしたりなど、さまざまな目的で利用できる一方で、記憶としての定着度合が下がるとの指摘もある。
「加藤プラチナクリニック」院長の加藤俊徳さんによると、脳はさまざまな機能を分担する「脳番地」に分かれて働いているが、言葉を聞き取る「聴覚系脳番地」と、物事や言葉を理解するのに関係する「理解系脳番地」の働きが倍速再生についていけない可能性があるという。
一方、学校教育の場でオンライン授業が増加しているが、アメリカ・カリフォルニア大学ロサンゼルス校で行われた研究によると、「オンライン授業の録画は2倍速で見ても理解度は変わらない」という結果が発表された。また、速読・速聴は脳の働きを活性化させるという研究報告もある。加藤さんはこう話す。
「学習という明らかな目的がある場合、ゆっくりと話すより、テンポよくスピードアップした方が理解が得られるというのは、注意力、集中力を得やすいからです。ゆっくりとしたテンポだとリラックスして漫然と聴けますが、しだいにダレて眠くなってしまうこともあります。早口の場合は注意を向けて集中しないと聴き取れませんから、おのずと理解系脳番地が活性化し、しっかり記憶としても定着するので学習効率が上がるのです」
ただし、知っている情報の理解を深めたり、復習をする場合の倍速は有効だが、まったく知らないことを勉強する場合は、倍速だと理解が追いつかない可能性があるという。
HOW TOものは、動画と自分の体験を合わせる
ヘアメイクやレシピなど、HOW TO動画を見ることが多いというのは、「Morning Labo」プロデューサーの久保帆奈美さん。
「動画を見ながら一緒にメイクしたりするので、自分のスピードと動画のスピードが同じになるように調整します。詳しい解説があるのはうれしいですが、実践する際には不要なのでスキップ。同じように手を動かすことでテクニックを習得しやすいと思います」(久保さん・以下同)