約160万円──これは、私立小学校に通う保護者が、1年間に払っている学習費の総額です(令和元年発表の「子供の学習費調査」より)。6年間で、1000万円近くになります。対して、公立小学校の場合は年間32万円(いずれも給食費や学校外活動費含む)。
私立小学校に通わせる親は、高額な学費を負担することになるので、当然、高年収世帯が多くなります。ある調査では、私立小学校に入れている保護者の約半数が世帯年収1200万円以上とされています。私立小学校では世帯年収2000万円も珍しくなく、「年収1000万円くらいだと苦しい」と語る保護者もいます。
では、実際に私立小学校、特に”お嬢様学校”と言われる学校の出身者は、どのような人たちで、社会に出てからどのような思いを抱いているのでしょうか。意外に感じるかもしれませんが、世間的に見れば恵まれた環境にありながら、そうした“お金持ちばかりの世界”の中で育ったことで、コンプレックスを感じる人もいるようです。
超有名私立の女子校で小学校から大学まで学んだ明日香さん(仮名、以下同)はその一人です。34歳、独身。
同級生には、CMでお馴染みの有名企業の社長の娘や、開業医の娘などお金持ちばかり。当の明日香さんも、曽祖父の代から自営で得た、港区の不動産を所有する家に生まれました。
「確かにお金には不自由なく育ったし、卒業旅行もミラノに10日間行きました。その時のお小遣いは100万円と、自由に使えるクレジットカードでした。けど別に周りに比べたら我が家なんて一般家庭。世間的にはお金持ちの家で育ったように見えるかもしれませんが、苦しいことも多いです……」
明日香さんはそう話します。彼女の最近の憂鬱のタネは、母親だそうです。私立で附属幼稚園や小学校から同じ環境の同級生も多く、そうなると母親同士がずっと“ママ友付き合い”を続けるケースも少なくありません。子供抜きでクラスのOG会やランチ会などがあり、娘たちの大学卒業後も情報交換をしているようなのです。
母親は、そういうママ友付き合いの中で、明日香さんがしばらく会っていない元同級生の近況を仕入れてきます。
「ゆみちゃんて、御曹司と結婚したのね、ハワイに別荘って聞いてたけど、日本国内にもリゾート施設持ってるって」
「さちえちゃんちは、この前熱海に旅行行ったら、別荘買ったって鍵渡されたって」
「くみこちゃんは娘ちゃんを母校にお受験させて合格したみたいよ。親孝行よね」
「ともこちゃんのご主人3階建ての二世帯住宅建ててくれたって」
「りえちゃんは自分で起こした会社で親にマンションプレゼントして、今年結婚するみたいよ」
こんな調子で、無邪気に元同級生の浮き世離れしたエピソードを伝えてきます。