銀行を取り巻く環境が大きく変わっている。マイナス金利政策による利ざやの縮小に加え、ITによる業務の効率化などを背景に、メガバンク3行が大規模な人員・業務量・店舗数の削減計画を打ち出したのは、2017年末のことだった。2024年までの間にメガバンク3行で合わせて3万人超の人員削減が見込まれている。
効率化に伴い、銀行の営業形態がインターネット中心に変わり、24時間どこでも取引が可能になるのは便利なことだ。しかしその反面、弊害も懸念される。ATMの暗証番号を変更しようと、窓口の予約を試みたという70代女性の話。
「コロナ禍以降、店舗に行く時には予約をしないと時間がかかると聞いていたので、銀行のコールセンターに電話して予約方法を教えてもらおうとしたんです。でも、何度かけても『ただいま電話が混み合っております……』の自動音声がいつまでも流れて、やがて一方的に切られてしまうことの繰り返し。もう、うんざりです」
警察など当局から繰り返し注意が呼びかけられる振り込め詐欺の被害に遭わないようにするためには、定期的な暗証番号の変更が効果的とされている。女性は不安を解消するためにも暗証番号を変えたかったのだが、インターネットに不慣れなため、直接教えを請いたかったという。が、その窓口にたどり着くことすら困難な実情もある。金融ジャーナリストの浪川攻氏が語る。
「窓口での手続きがインターネットに代替されるのは、利便性が高まる面もありますが、ネット接続に障害が出た際は入出金すらできなくなるリスクがつきものです。そうしたケースで頼みの綱のコールセンター機能の充実や使い勝手の向上が追いついていない。ネットバンキングが一般化した先には、人員削減でこうした事態が頻発する懸念があります」
メガバンクの構造改革が進行中の2019年4月、三井住友FGの太田純CEO(当時)は「銀行が不要になるのであれば、我々自身が銀行でなくなればいい」と発言した。
銀行は大きくその姿を変えようとしている。利用者もそのことを念頭に置き、付き合い方を考えるべきなのかもしれない。
※週刊ポスト2022年3月18・25日号