大前研一「ビジネス新大陸」の歩き方

大前研一氏 「嫡出推定」論議は噴飯、少子化対策に「母子本位の制度を」

離婚後に生まれた子供の「父親」の決め方(イラスト/井川泰年)

離婚後に生まれた子供の「父親」の決め方(イラスト/井川泰年)

 政府は補助金制度や保育施設の整備など、様々な子育て支援策を打ち出しているものの、出生数が改善される兆しは見えてこない。はたして少子化に歯止めをかけるためにはどのような政策が求められるのか。経営コンサルタントの大前研一氏が、日本の少子化問題の解決策について考察する。

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 法制審議会は2月、子供の父親を決める「嫡出推定」を見直す民法改正要綱を古川禎久法相に答申した。

 その内容は、離婚後300日以内に生まれた子は「前夫の子」と推定する規定を維持する一方、離婚後300日以内に生まれた子でも女性が出産時点で再婚していれば「現夫の子」とする例外を設け、それに伴い女性だけに規定されていた離婚後100日間の再婚禁止期間は撤廃する、というものだ。

 離婚した女性が前夫以外の男性との子供を産んだ場合に前夫の子となるのを避けるために出生届を出さず、子供が無戸籍になるのを避けることが目的で、政府は2022年度以降の法案提出を目指すそうである。嫡出推定の見直しは、実現すれば1896年(明治29年)の民法制定以来初めてとなるが、こんな古い法律で国が130年近くも女性と子供の人生を縛り付け、抑圧してきたのだから愕然とするしかない。

 今後の議論では、前述の再婚時の例外設定や再婚禁止期間の撤廃などが争点となりそうだが、これらも噴飯ものである。

 なぜ、離婚後300日以内に生まれた子は「前夫の子」で、301日以後に生まれた子は「現夫の子」になるのか? 出産日が前後するのは当たり前だから、意味不明である。再婚も、なぜ離婚後100日間は禁止で101日後ならOKなのか? 論理的な理由は何もない。これらは戸主に家の統率権限を与えていた日本独特の「家制度」と「男中心(=戸籍中心)」の発想でしかないのである。

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