新型コロナウイルスの第6波が収束する前に、今度はウクライナ・ショックによる「物価爆騰の波」が襲来している。ガソリンや灯油などのエネルギー関連や、うにやサーモンといった水産関連の価格上昇が懸念されるなか、さらに家計に大きく響きそうなのが、穀物価格の高騰だ。流通アナリストの中井彰人さんが話す。
「ロシアは世界4位、ウクライナも世界9位の穀物生産国です。特にロシアとウクライナの小麦輸出は世界全体の約3割を占めている。両国からの輸出が滞れば、世界的な供給不足になって小麦の相場は爆騰します。日本の主な小麦の輸入先はアメリカ、カナダ、オーストラリアですが、世界的な小麦価格の上昇による影響は避けられません」
急激な値上がりが始まっている小麦粉を原料とするパンやパスタなどの値段は、さらに上昇することが確実だという。すでに6月以降、サンヨー食品は『サッポロ一番』など即席麺を約10%値上げすることを発表している。
「このままいくと、即席麺が年内にもまた5~10%ほど値上がりするおそれが出てくる」(中井さん)
また、ロシアとウクライナは飼料用トウモロコシが世界全体の輸出量の約2割を占める「飼料大国」でもある。経済ジャーナリストの荻原博子さんが話す。
「国産豚や国産牛も、飼料の8~9割は海外からの輸入に頼っています。その価格が爆騰するので、肉類の値段も当然上がります。“魚が値上がりするなら、肉を食べればいい”というわけにはいかないのです。すぐには上がらないと思いますが、半年後には2割ほど値上がりしているおそれがあります」
飼料価格の高騰は、肉だけでなく牛乳やチーズにも影響する。すでに森永乳業や雪印メグミルクが4月からのチーズの値上げを発表、銀座コージーコーナーも4月1日からシュークリームなどの生菓子や焼き菓子の値上げを決めた。日本マクドナルドは3月14日から、原材料価格や物流費の上昇を理由に、ハンバーガーなどの値上げに踏み切る。昨年から値上げを繰り返してきた食用油の値段も、さらに上昇する見込みだ。
「ロシアとウクライナ両国で、ひまわり油輸出の約8割を占めています。ひまわり油は日本人にはあまりなじみがないかもしれませんが、世界的に見れば大豆油や菜種油に次いで消費されている食物油。ウクライナ情勢が収束を見なければ、年内に3割程度までの値上がりもありえます」(中井さん)
※女性セブン2022年3月24日号