橋本さん:昔の経済学は「人は合理的で自分が得するように動く」という考え方が基本でしたが、実社会では、ボランティアもやるし、自分が損をしても相手に尽くそうとする人も少なくない。「学問上の人間」と「実際の人間」にズレがあって、そこを探るのが行動経済学のスタートなんです。人はそもそも不合理なんですよ。
他人の幸せを願う利他性に関する研究もたくさんあります。損をしたくない自分と、必ずしも利益を求めていない自分。その両方がひとりの人間の中に共存しているんです。
オバ記者:理屈と感情は違うよね。ちなみに、買い物は感情に根ざした行動だと思うんだけど。
橋本さん:そうですね。人は理屈で買い物はしません。欲しいという情動がなければ買わない。理屈ではないことは確かです。
オバ記者:それにしても毎回、先生の口から「○○の法則」がスッと出てくるのがさすがですよね。
橋本さん:恐れ入ります(笑い)。
オバ記者:なんで貯金できないのか、私の財布からお金が知らず知らずに出て行ってしまう理由がわかってきました。先生の教えを今後に生かします。
(了。第1回から読む)
【プロフィール】
橋本之克さん/マーケティング&ブランディングディレクター。昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。近著に『9割の買い物は不要である』(秀和システム)。
「オバ記者」こと野原広子さん/空中ブランコや富士登山など体当たり取材でおなじみのライター。女性セブン連載『いつも心にさざ波を!』も好評。64才。
取材・文/藤岡加奈子 撮影/浅野剛
※女性セブン2022年4月28日号