ロシアのウクライナ侵攻に伴い、世界的なエネルギー危機が起きているなか、もちろん日本のエネルギー安全保障についても不安要素は少なくない。日本のエネルギー政策について、経営コンサルタントの大前研一氏が提言する。
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日本の電力事情はお寒い限りだ。3月下旬には、福島県沖地震で複数の火力発電所が停止したところに真冬並みの寒さと悪天候が重なり、政府が東京電力管内と東北電力管内に初の「電力需給逼迫警報」を出して節電を呼びかける事態となったが、全国33基の原子炉のうち28基が停止(2022年4月12日時点)している日本の場合、電力不足は構造的な問題である。また、今回の警報を機に、改めて太陽光発電は天気が悪いとほとんど役に立たないこともよくわかった。
経済産業省は、来年1月の東京電力管内で供給の余裕度を示す予備率が0.1%となり、安定供給に必要な3%を下回るとの見通しを示した。他の9エリア中6エリアの予備率も3%台しかないという。まさにブラックアウト(大規模停電)寸前の綱渡り状態だ。
世界で進む原発シフト
そもそも政府は昨年、2050年度のカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量実質ゼロ)に向け、2030年度に温室効果ガスの46%削減(2013年度比)を目指すと表明し、それを実現するための新たな第6次エネルギー基本計画を策定したばかりである。しかし、その後の原油高、円安、ウクライナ戦争によって、前提条件は大きく変わった。対応策を早急に練り直さなくてはならない。