ある放送後、部下の刑事が震える声で電話してきた。連日の捜査でむさ苦しい風貌になり、年頃の娘から嫌われていたが、テレビで父の仕事を見た娘が「お父さん、カッコええやん」と漏らしたという。気丈な部下だが、この時ばかりは涙にくれていた。
警察特番を観て署を訪れたご夫婦から「小学生の息子が秋山さんのファンで『僕も刑事になりたい』と言っています。ぜひ、サインを頂けますか」と頼まれたこともある。のちに、その少年は香川県警察の刑事になった。
ワシは在職時、ヤクザや犯人に間違われることもしばしばで、ハチャメチャな失敗や大立ち回りを繰り返してきた。殉職しかけたこともあったが、市民の安全を守るために42年間の警察人生のすべてを費やした。今もこの仕事が天職と信じていて、生まれ変わったらまた刑事になるつもりや。
同じように、全国で志のある警察官が日々懸命に市民生活を守っている。連載は今回で終わるが、読者の皆さんは無名の警察官の頑張りにぜひとも思いを寄せてほしい。ほなっ、またいつの日か!
【プロフィール】
秋山博康(あきやま・ひろやす)/1960年7月、徳島県生まれ。1979年、徳島県警察採用。交番勤務、機動隊を経て刑事畑を歩む。県警本部長賞、警視総監賞ほか受賞多数。退職後は犯罪コメンテーターとして活動。YouTube「リーゼント刑事・秋山博康チャンネル」が話題。最新刊『リーゼント刑事 42年間の警察人生全記録』(小学館新書)が3月31日に発売された。
※週刊ポスト2022年4月29日号