終の棲家の選択肢となる老人ホームだが、近年は入居へのハードルが高くなりつつあるという。老人ホームアドバイザーの伊藤直剛氏が語る。
「超高齢化で入居希望者が急増するなか、希望条件に合う施設は不足状況にある。必然的に売り手市場となり、ホームが入居者を選べる立場になっています」
ホーム入居時は本人や家族と面談のうえ、施設長やスタッフが合議し、入居の可否を判断する。
主な審査項目は、【1】支払い能力・身元引受人の有無、【2】医療行為の有無、【3】認知症の度合いなど共同生活の適応性、【4】家族の協力体制の有無などだ。
「『お金があれば入れる』とは限りません。本人が施設に適応できるかどうかも大きなポイントとなる。施設や往診の医師が対応できない医療行為が必要な場合も、断わられるケースが多い」(伊藤氏)
要介護3のA氏(73)は在宅生活が厳しくなり、ケアマネジャーが施設入居を勧めた。だが特養は待機者が多く、老人ホームは審査でNGとなった。
「ネックはお金でした。A氏は月10万円足らずの年金暮らしで預貯金もわずか。家族の金銭援助も難しく、入居審査でことごとくはねられてしまいました」(伊藤氏)
経済的余裕があっても「入居不可」と判断されることがある。軽度の認知症があるB氏(81)は、入院中に病院から、「退院後に自宅に戻るのは困難」と言われ、家族が慌てて施設を探した。だが入院中、医療従事者に暴言を吐いたことがネックとなった。
「病院からの診療情報提供書に暴言歴が記されており、入居審査でNG判定となりました。近年はどこの介護施設も人手が足りず、スタッフの離職を避けたい施設は、トラブルを招きそうな人物の入居を拒否する傾向があります」(伊藤氏)