外国人機関投資家からは評判の悪い日本の株主優待制度
配当利回りはJTが6%以上、オリックスも4%近くで、いずれも魅力的な水準といえる。個人投資家にとって両社は優待と高配当がダブルで期待できるため、ただ保有しているだけでも満足度が高く、多少の株価変動はそこまで気にならない存在だった。しかし、優待が廃止されて品物を選ぶワクワク感と現物を受け取る楽しみがなくなれば金額換算以上の喪失感があり、株価に一喜一憂することも多くなることも予想される。
もともと株主優待は海外では見られない日本独自のしくみで、最低単元である100株しか持たない株主にも贈る企業が多いことから、事実上、個人投資家の優遇制度であり、株主平等の原則に反するという指摘もある。このため、東証の売買の7割近くを占めるといわれる外国人機関投資家にはすこぶる評判が悪く、こうした点を気にする企業が増えてもおかしくはない。今回の両社の判断が、優待制度の転換点になるかもしれない。
かつては「優待廃止」のほとんどが企業業績の悪化を理由としていたのに対し、オリックスとJTは業績が堅調な中で廃止に踏み切った。今後は同様のケースが増えてくることも十分考えられる。両社の場合、突然優待を廃止すると株価への影響が大きいと判断したのか、実際の廃止までに1年以上の猶予期間を設定しているが、他の企業もこうした猶予を設けるとは限らない。優待投資家は改めて、優待がなくても持ち株を保有する価値があるかどうかを問い直し、優待が廃止されたらどう行動するかをシミュレーションしておく必要がありそうだ。
文:森田悦子(ファイナンシャルプランナー/ライター)