一方で、期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は12日、2.59%と前日比-0.11ptと大幅に低下。4月21日に付けた最高値3.02%から大きく低下しており、明確な低下トレンドを描いている。米10年債利回りも先週後半から2.8%台へと低下するなど、低下基調が鮮明だ。債券市場ではインフレ加速を見込んだトレードの巻き戻しが進められているようだ。
株式市場は、3月中旬からの強烈なリバウンド相場時には、債券市場で織り込みが加速するインフレ懸念を無視する形で上昇し続けていた。その際には後になってしっぺ返しを食らうのではないかと懸念したが、4月以降は実際にそうなってしまった。しかし、今回は、当時とは反対に、インフレ懸念が強まるなかで米主要株価指数が年初来安値を更新し続ける一方、債券市場ではそれまでのインフレ懸念が後退するかのような動きが続いている。今回も株式市場が債券市場を後追いするかのような形が繰り返されるのだとすれば、今後、米主要株価指数はリバウンド局面に入る可能性があろう。
また、同時に低下基調を辿っているかのような米BEIと米長期金利だが、つぶさに見ると、米BEIが4月21日の3.02%をピークに12日時点の2.59%まで低下しているのに対し、米10年債利回りは5月6日に3.14%のピークを付け、12日時点の2.85%まで低下してきている。米BEIの方が先にピークを付け、下落率も大きい。インフレ懸念が払しょくされていないことを踏まえれば、BEIがここから更に低下する余地は小さいとみられ、遅れて調整を始めた米長期金利の方が2%台半ばくらいまではまだ低下余地がありそうだ。
BEIが下げ止まる一方で金利の低下が続けば、名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利の低下につながる。新型コロナショック以降長らくマイナスだった実質金利がその幅を急速に縮小し、プラス転換して上昇し続けていたことがハイテク・グロース株の重荷になっていたため、実質金利の上昇が一服して低下することになれば、足元でたたき売られているハイテク・グロース株の買い戻し機運が高まりそうだ。
先週末は本決算を発表したソフトバンクGが大幅な赤字を計上しながらも、あく抜け感から株価が急伸していた。こうした動きからも、目先はハイテク・グロース株のリバウンド相場の到来に期待したい。
一方、今週は中国で鉱工業生産など重要経済指標が発表される。都市封鎖(ロックダウン)が続く同国経済の減速懸念が強まるなか、経済指標の大幅な下振れが警戒され、中国地域での売上比率が高い銘柄などには警戒しておきたい。
今週は16日に4月企業物価指数、4月工作機械受注、中国4月鉱工業生産、中国4月小売売上高、中国4月固定資産投資、米5月ニューヨーク連銀景気指数、17日に米4月小売売上高、米4月鉱工業生産、18日に1-3月期GDP速報値、米4月住宅着工件数、19日に4月貿易収支、3月機械受注、米5月フィラデルフィア連銀景気指数、米4月中古住宅販売、20日に4月全国消費者物価指数などが公表予定。