そんな住み心地の良さを感じるAさんだが、高齢の大家が2階に住んでいることで、気を遣うこともあると明かす。
「やはり、帰宅が夜遅くになる時は気を遣いますね。大家さんは22時くらいには寝ているようで、その時間を過ぎると、ドアを開ける音にも気を遣うし、お風呂にも入りづらい。やはり戸建ての木造なので、音は響きやすいんですよね。マンションやアパートに住んでいた時は、隣や上下階に住んでいる人のことをそこまで気にしていませんでしたが、さすがに大家さんには気を遣います」(Aさん)
毎朝、入居者に「おはよう」「いってらっしゃい」
人材派遣会社に勤務する30代男性・Bさんは、マンションの最上階に大家が住む物件で暮らしたことがある。その物件に惹かれた理由は「家賃の安さ」だった。
「閑静な住宅街で、静かだし日当たりもいい。水回りやキッチンの設備も充実しているのに、相場より1万円くらい安かったんです。しかも賃料だけで管理費はかからない。そんな優良物件に空室があるのが不思議でしたが、入居審査時に大家さんとの面接があって、大家さんのジャッジが厳しいことがわかりました。僕も高齢のご夫婦とお茶しながら、40分くらい仕事のことや家族のことなど、世間話をしました」(Bさん)
無事に審査が通り、入居すると、まるで「下宿している」感覚に陥ることも多かったというBさん。入居者とのコミュニケーションを大切にする大家だったという。
「朝はいつも外を掃除したり、庭の手入れをしていたりして、入居者たちに『いってらっしゃい』『おはよう』の挨拶を言ってくれます。休日、洗濯を干していると、下から声をかけてくることもありました。にわか雨が降った時、洗濯物が干しっぱなしだと、部屋に電話がかかってきたことも。物件には学生さんも多く、『入居者=自分の子供』みたいな感覚だったのでは」(Bさん)
その一方でBさんは、「自分にとっては快適だったが、人によっては煩わしく感じるケースもあるかもしれない」と振り返る。
「隅々まで大家さんが目を光らせていて、例えば共有廊下に物を置く人とか、騒がしい人への注意は厳しかった。ゴミの捨て方を細かく注意されている人もいましたね。まず掲示板の張り紙で警告して、それでも改善されなければ、大家さんが入居者に直接注意しに行く感じでした。だからこそ住みやすい環境が保たれていたのですが、それを“ちょっとうるさい”と感じる人がいてもおかしくないとは思います」(Bさん)