また、6月2日には石油輸出国機構(OPEC)プラスが原油増産幅の拡大で合意したものの、原油先物価格は高止まりしている。EUによりロシア産石油の一部禁輸などの追加制裁が科されるなか、焼け石に水と思われているのか、OPEC参加国の供給体制の制約から実際の増産幅に疑念を抱かれているようだ。
さらに、ドイツとヨーロッパ圏で発表された5月CPIは予想を大幅に上回り、前年比の伸びとして共に過去最高を記録。これを受け、エネルギー生産・輸入状況に違いはあるとはいえ、米国でも本当に3月でインフレはピークを打ったのかという疑念を抱く投資家が増えている。少なくとも伸び率がピークアウトしても、最高値圏での伸びが維持されれば、FRBの金融引き締めペースの鈍化は期待できない。
このように、先週は株式市場にとってネガティブな材料が多くあったにもかかわらず、相場は大きく上昇した。ただ実際は、短期筋によるプット(売る権利)の売却など、デリバティブ絡みのポジション解消の動きが、薄商いのなかで株価指数の上昇率を実体以上に強く見せているに過ぎない可能性が高い(特に米国市場)。
こうした実体を無視した需給要因主導での上昇は危うさを伴っているといえる。日経平均で言えば、28000円を明確に超える材料があるとは言えず、売り方の買い戻しによる上昇もそろそろ一服する頃合いといえる。そのため、週末の米5月CPIが近づくタイミングで、相場は再び神経質な展開が想定され、翌週には米連邦公開市場委員会(FOMC)も控えていることを踏まえれば、調整が入る可能性にも留意したい。日経平均のチャートは改善してきているが、足元の動きをもってして過度に楽観的になるのは危ういと思われ、まだまだ警戒感を持って臨むべき局面と考える。
今週は6日に米アップルの開発者会議(WWDC)(~6月10日)、7日に4月家計調査、4月毎月勤労統計調査、4月景気動向指数、8日に1-3月期GDP確報値、5月景気ウォッチャー調査、米10年国債入札、9日に中国5月貿易収支、ECB定例理事会、10日にメジャーSQ、5月企業物価指数(PPI)、中国5月PPI、中国5月CPI、米5月CPIなどが予定されている。