コロナ禍で利用者が減ったことから、通勤や通学の足として欠かせない鉄道の運賃値上げの動きが相次いでいる。今年1月に東急電鉄が2023年3月に初乗り運賃の値上げを発表したのを皮切りに、近畿日本鉄道、JR西日本、さらにはJR東日本、東京メトロなどがいずれも来年春からの値上げを発表。
ロシアのウクライナ侵攻によって、原油や天然ガスなどのエネルギー価格に加え、小麦をはじめ食料品の価格も高騰。世界的なインフレが加速する中、鉄道運賃も値上げラッシュの波から逃れられないようだ。
そうした中、なんと逆に「値下げ」に踏み切る鉄道会社もある。千葉県北西部の千葉ニュータウンと東京都東部を結ぶ北総線を運営する北総鉄道である。
これまで北総線は、度々「日本一運賃が高い鉄道のひとつ」と指摘されてきた。初乗り運賃は210円(ICカード利用なら203円)でそこまで高く感じないかもしれないが、距離が延びるにつれ小刻みにどんどん上がり、4~5kmで310円、10~11kmで520円、20kmで700円、全線(約32km)乗ると840円となる。これがどれほどかというと、たとえばJR東日本(電車特定区間)なら7~10kmで170円、11~15kmで220円、東急電鉄なら8~11kmで200円となり、距離ベースの運賃で考えると、実に他の鉄道会社の2倍以上高い水準なのだ。
印旛日本医大から東京へ行く機会が多いという、沿線住民の60代男性が言う。
「京成線や都営浅草線への直通電車で東京へ行くと、片道で1000円、往復2000円以上はかかってしまう。沿線に住んでいると、その運賃の高さを実感します」
それが今年10月1日から運賃全体で平均15.4%もの値下げとなる予定だという。
まず普通運賃は、初乗りが210円から190円(ICカード利用なら188円)に引き下げられ、12~14kmは現行の580円(同580円)から480円(同475円)へと100円(同105円)も下がるなど中距離帯を重点に値下げされる。
さらに大幅な値下げとなるのが「通学定期」。千葉ニュータウンの東にある印西牧の原駅から都内の京成高砂駅間の通学定期運賃は、1か月定期が現行の1万4990円から4990円へと1万円引き、6か月定期では現行の8万950円から2万6950円へと実に5万4000円もの大幅値下げとなる。値下げ率は64.7%にもなり、同社が「子育て世代への配慮や若い世代の入居促進に繋がるよう、大幅な値下げ」というのも頷ける。また、通勤定期も普通運賃に準じて13.8%値下げされる。