さらに深刻なのが、Cさん(70歳)のケースだ。妻に先立たれ一人暮らしだが、電車で1時間のところに住む長女(40歳)が孫を連れて月に数回遊びに来てくれるという。問題は長男(35歳)だ。
「20歳の頃に家を飛び出して音信不通だった長男が、妻の葬儀に現われたんです。放蕩息子ともこれで関係修復できるかと期待した矢先、葬儀後に長男から『1000万円の借金の肩代わり』を懇願されてしまった。甘やかして育てた自分も悪いと思い、退職金と貯金を取り崩して助けてやったのですが、その後は再び音信不通に。こんな息子に私の遺産はビタ一文渡したくない」(Cさん)
法定相続人である息子に遺産を残さない方法はあるのか。弁護士の塩田慶氏はこう言う。
「遺留分を含め遺産を一切相続させたくない場合は『相続人の廃除』の手段があります。これが認められた例として、息子が20年にわたりギャンブルなどで2000万円を散財し、返済を父に押し付けた事案がある。
ただし、被相続人に対する“虐待”や“重大な侮辱”、相続人に“著しい非行”があると家裁が認める必要があり、ハードルは高い。長男から遺留分を請求される可能性はありますが、遺言で長男以外に遺産を配分したほうがベターでしょう」
※週刊ポスト2022年6月24日号