キャリア

ほとんどの人が“負け組”になる時代、「生涯現役」が求められる理由

50才からでも「生涯現役」をめざす

 人々の期待が打ち砕かれて、ほとんどが“負け組”になる時代に、どう備えるべきか。橘さんが提唱するのは「生涯現役」という生き方だ。

「低金利というのは、投資のプロでも高利回りの運用ができないということでもあります。素人がちょっと勉強したくらいで、大きな利益が得られるはずがありません。特に高齢者は、なけなしの金融資産を失えば取り返しがつかない。それに対して働けば確実に収入が増えるのですから、どちらが有利かは考えるまでもないでしょう。

 自分の好きなことや得意なことを仕事に結びつけること。同僚や顧客から“すごいですね”“助かりました”と感謝され、評価されるような仕事なら、いくつになっても働きたいと思うでしょう。嫌な仕事をずっと続けるのは、苦痛でしかありません」

 大学や企業のブランドはもはや通用しないからこそ、専門的かつ、好きで得意なことを仕事にするべきだったのだ。だが、若くなくても、働き始めるのは遅くない。

「確かに、中高年が新しいことを始めるのは難しい。しかし、成功例もあります。知り合いの女性はずっと専業主婦で、50代半ばから非正規社員として通信教育の採点の仕事を始めました。彼女には“職場のお母さん”のようなコミュ力があり、若手だけでなく中堅の管理職にも慕われ、ついには正社員のオファーまで来た。“責任ばかり重くて割が合わない”と断ったそうですが。良好な人間関係を新しく築くことは女性の強み。年齢を重ねたからこそ、挑戦できる仕事もあるでしょう。

 そもそも、ずっと成功し続けることなどできるわけがありません。ピーク時の3分の1を維持できれば充分です」

家族との幸せもあきらめていい

 私たちは人類史上もっとも幸せな時代に生きていると、橘さんは語る。

「長い歴史の中で、人類は飢餓や病気の脅威を乗り越え、健康長寿を実現しました。経済格差が叫ばれますが“現代の貧困層の暮らしは、中世の王侯貴族より恵まれている”といわれます。人類史上もっとも幸せな時代なのに、現代人は幸福感よりも、多くの不満を抱えているのです」

 社会に出たとたんに激しい競争で疲弊し、ふと目にしたSNSでは、他人の幸せそうな姿がこれ見よがしに強調される。そんな状況で、本当はいまも幸せなはずの自分の人生に求める「期待値」が上がっているのかもしれない。

 そうして欲張りになってしまった私たちに求められるのは、なるべくストレスを減らして、身の丈に合った暮らしをすることだ。

「いまは食べるものも着るものもあまりに豊かで、選択肢が多すぎる。そんな世の中でストレスを避けるには、シンプルな暮らしを心がける『ミニマリズム』しかありません。お金を貯めるもっとも確実な方法は、お金を使わないことですから、シンプルライフは、老後の資産形成にも適しています」

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