身内が亡くなった時の「相続」の手続きは多岐にわたり、必要書類の収集や申請に手間と時間のかかるものもあれば、親族同士での協議が面倒なトラブルに発展する場合もある。ルールが繰り返し変更されているうえに、手続きの期限が区切られているものも少なくない。
そこで上手く活用すれば頼りになるのが相続のプロである「専門家」だ。1級ファイナンシャル・プランニング技能士、社会保険労務士、相続診断士などの資格を持ち、『失敗しない相続対策』などの著書がある吉澤諭氏(吉澤相続事務所代表)はこう話す。
「相続のプロに相談するメリットは少なくありません。目の前に発生している問題を解決に導けるだけでなく、相談者自身が気づいていないトラブルの種を見つけ、問題を未然に防ぐためのアドバイスをするのがプロの役割です。多くの相談者は相続対策のなかでも“相続税の節税”に興味を持っていますが、実は一番難しいのが相続人同士のもめごと、いわゆる“争族”への備えです。
ルールに精通していればある程度の税金対策はできますが、相続人全員の合意が必要になる遺産分割協議は落としどころを探らなくてはいけないから難易度が高いのです。そうした認識をもとに、専門家と一緒に問題の所在や解決策を明らかにしていくのがよいでしょう」
単に「相続の専門家」と言っても、弁護士や税理士、司法書士や行政書士など、様々な資格を持つ専門家が存在する。どういった専門家がどのようなトラブル、問題を解決するうえでの相談相手に適しているのか。
「相続税の問題であれば税理士、遺産分割の紛争解決であれば弁護士、不動産の登記が絡んでくると司法書士といったかたちで、相談者が直面する問題の解決に適した資格を持つ専門家に相談するのはもちろん重要ですし、場合によっては複数のプロに話を聞くのが望ましい。税理士と弁護士、税理士と司法書士といったかたちで組み合わせるのもよいでしょう。
不動産の評価に際して特殊な手法が必要なケースでは不動産鑑定士や土地家屋調査士に相談するとよいこともあります。社会保険労務士は年金などのプロで、直接的に相続に絡むケースは少ないが、たとえば内縁関係にある人が遺族年金を請求するといった複雑な事情がある場合は頼れる存在となります」(吉澤氏)