田代尚機のチャイナ・リサーチ

TikTokのバイリンガルライブコマースが中国で大バズり 事業環境が一変した学習塾

TikTokでバズったことで株価も沸騰、事業環境も一変(AFP=時事)

TikTokでバズったことで株価も沸騰、事業環境も一変(AFP=時事)

 中国のTikTokで最近、「東方甄選」というライブコマースが注目を集めている。商品の説明をしているのは董宇輝氏。つい先日まで、オンライン学習塾で高校生の英語講師をしていた29歳の若者だ。中関村(大学やハイテク企業が集まる北京市北西部の地名)の周杰倫(アジアで人気の高い台湾出身の歌手)と称される。流暢な英語を織り交ぜながら、真空パックされたトウモロコシなどの商品のうんちくを軽快な口調で話すといったバイリンガルライブコマースが若者から大きな支持を得ている。

“名言”がいくつもある。たとえば、「太陽光線ですら地球に届くまで8分もかかるんだ。君にも時間が必要なんだよ。少し辛抱しよう」とか、「君の苦悩は選択肢が大きすぎるからなのかもしれない。僕みたいに選択の余地がなければ、迷わずに済むんだよ」など、真面目な若者世代に響きそうな言葉を選んで使っている。

 TikTokのユーザーは10代、20代の若者が中心であるが、遊びをテーマとしたコンテンツがほとんどだ。しかし、若者のニーズは遊びばかりにあるわけではない。知性が感じられて、気楽に楽しみながら、しかも無料で英語に触れ合えるといったコンテンツは希少性が高い。そのあたりが成功の要因ではないかと分析される。

 このライブコマース「東方甄選」を運営するのは、オンライン学習塾の大手の新東方在線科技(01797)である。

 中国でこの業界は、厳しい状況に置かれている。2021年7月に発表された「さらに一歩進んで義務教育段階の学生の宿題負担と学外学習負担を軽減することに関する意見」(双減政策)によって、中核ビジネスである学習塾、予備校経営から事実上の撤退を余儀なくされている。

 各社が生き残りをかけて、教育関連のハードウエアの販売、職業教育、受験とは直接関連しない大人向け教育などの事業への転換を進める中、同社はこうした事業のほかにライブコマース事業に進出している。

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