ライブコマースと英語学習の組み合わせの“潜在需要”
事業開始は2021年12月。当初は兪敏洪CEOが自ら出演するほどの力の入れようであったが、実績は上がらず、その後、販売は低迷した。冒頭で紹介した董宇輝氏がバズったのは今年6月に入ってからだ。TikTokは一瞬で事業環境さえも変えてしまう力がある。
株価の推移をみると、それがよくわかる。過去最高値(権利落ち調整株価、以下同様)は2020年7月22日の場中で記録した43.45香港ドル。学習塾への当局の締め付けが段階的に強まることで株価は下落、2022年5月12日には最安値2.84香港ドルまで下げている。その後は少し戻したものの、6月2日の終値は3.65香港ドルに過ぎなかった。それが端午節休場明けの6日から16日まで9連騰。16日の最高値は33.15香港ドルまで上昇し、この間、株価は9倍に跳ね上がった。
ただ、その後は売られており、20日は16.98香港ドルで引けている。株価の動きだけを見て仕手株だと結論付けるのは簡単だが、そうとも限らない。
中国本土マスコミ報道によれば、100万人のフォロワーをつかむまで6か月かかっていた「東方甄選」だが、今回の“バズり”で次の100万人は3日間、更に次の100万人も3日間で達成。6月16日現在、フォロワー数は1000万人を超えている。
ライブコマースと英語学習といった奇抜な組み合わせだが、潜在需要は大きいはずだ。学習塾が持つノウハウを最大限に活用することで、オンラインでの“新しい商売”を開拓してくれるのではないかといった投資家の期待も膨らんでいるようだ。
日本では塾講師である林修先生がテレビタレントとして活躍している。作家になった学校の先生、塾講師の方もいらっしゃる。ネット社会では話術や、知識が大きな武器になる。先生と称される方々にとって、ライブコマースでも、YouTubeでも、活躍の余地は大いにあるのではないだろうか。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(https://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も発信中。