このケースでは偽造した証拠がたまたま医者のカルテに残っていたため解決したが、公正証書遺言の作成に当たっても相続人が恣意的に書かせることは不可能ではないという。
「公正証書遺言は元裁判官や元検察官などが公証人となって立ち会って作成するので厳密なはずですが、故意とは断定できませんが見逃してしまうことがあります。実際に、後で調べたら遺言書作成の前日に受けた認知症のカルテが出てきて遺言書が無効になった判例もあります」(眞鍋氏)
認知症といっても症状の出方は人により様々なため、長谷川式などの認知症診断スケールでその場で測定しない限り、判断が難しいという。
とはいえ、相続人が遺言書を偽造させた場合は「相続欠格者」となって相続の資格を失う。
遺言書の正当性を証明するには、遺言書を作成した時点で同時に「認知症ではない」と証明する医者の診断書ももらっておくのが望ましい。また、正常な判断能力があったと一目でわかるように、遺言書作成時にビデオを撮影しておくことなどが効果的だという。
※週刊ポスト2022年7月8・15日号