不動産業界は中国経済の弱点である。恒大集団のデフォルト問題は記憶に新しい。直近では、複数の地方都市において、マンション購入者が団結してローンの支払いを拒むといった“爛尾楼”問題が多発しているとの情報が市場に広がり、不動産、銀行株が急落した。
複数の中国本土マスコミ報道によれば、7月13日現在、河南、湖北、湖南、山東、江西、江蘇、陝西、遼寧、吉林などの地方の中堅都市で106棟の“爛尾楼”問題が発生している。
“爛尾楼”とは何か。
地場系不動産ディベロッパーが開発するマンションなどでは、着工前から完工後まで数段階に分けて売り出しを行うのが慣例である。売りやすい物件から先に売却し、その資金を使って開発を進めるようなことが行われている。
条件の良い物件ほど早い段階で売られてしまうので、買い手側はできるだけ建設の早い段階から買おうとする。もちろん、完成してから買うよりも、割安で買うことができるといったメリットもある。
しかし、業者サイドにおいて、新型コロナ禍による販売不振で資金調達が思うように進まず、さらに、サプライチェーンの寸断により原材料の調達が遅れたり、不足したり、その価格が上昇したりした。そのため、予定通りに物件を引き渡せないケースが足元で急増した。
現在の規制に基づいて取引されているとすれば、購入者は頭金を30%用意し、残りは銀行と住宅ローン契約を結ぶことで、資金を調達する。ローンの支払いは契約直後から発生するのに物件は約束通りに引き渡してもらえない。こうした状況に強い不満を持った購入者たちが、マンション(棟)ごとに結束し、銀行に対するローン返済の拒否を宣言するといった事案が増えている。これが“爛尾楼”問題である。
問題の根っこは不動産ディベロッパーの工事が滞っているところにある。彼らの経営に問題があれば、需給両面で不良債権が発生することになり、金融システム全体への影響が懸念される。