【回答】
相続とは、故人が持っていた一切の権利義務を相続人が承継することをいいます。遺言書があれば、それに従って遺産を分けますが、ない場合は法律に従い配分します。
例えば、故人に子供と配偶者がいればそれぞれ2分の1、子供がいない場合は配偶者が3分の2・故人の両親が3分の1……というように割合が定められています。
なお、遺言書は法律の要件に従って作成されていなければ、たとえ故人が何かを書き残したとしても、正式な遺言書とは認められません。
また、故人が生前に死後の意思表示をしたものを遺言といいますが、これも「遺言書」とは別ですので、遺産について故人が言い残していても、法律上は無効です。
ご相談では、娘さんがお孫さんのために1300万円を貯めていたようですが、このお金についての遺言書は作成されていませんので、法律の定めに従って遺産を配分する必要があります。
今回のケースでは、相続人は、故人の配偶者であるSさんとその息子であるお孫さんとなり、どちらも1300万円の2分の1ずつ、650万円を譲り受ける権利があります。Sさんはすでに700万円を入手しているため、お孫さんは残りの600万円の定期預金に加えて、不足分の50万円を請求することができます。
相続には配分を記載する「遺産分割協議書」という書類がありますが(後述)、今回それを作成するのであれば、(Sさんがお金に清廉なタイプでないとすれば)お孫さんがSさんに丸め込まれないよう気をつけた方がいいかもしれません。権利上は2分の1ずつでも、当事者間で合意すれば、取り分が8対2や10対0となることもあり得るからです。
認知症の高齢者などが判断力のない状態で遺産分割に応じてしまった場合であれば、裁判所で無効にすることも可能ですが、このケースで不正の立証は難しいでしょう。冷たいようですが、「これでガードすればつけ込まれない」という手立てはありません。おかしいと感じる提案には決して合意をしない、それだけです。
なお、定期預金の口座から現金を引き出せていないのはおそらく、娘さんの死後に口座が凍結されたからでしょう。引き出すには銀行や遺産の分配方法によって多少の違いはありますが、「本人の死亡が記載されている戸籍」「相続人の戸籍謄本」、必要に応じて「遺言書」「遺産分割協議書」などが必要となります。
ちなみに、Sさんには自己破産の過去がありますが、だからといって相続人になれないわけではありません。相続人としての権利はあります。