また、親子の一方が戸籍から抜けたとしても、単に別々の戸籍となるだけで親子関係は残ります。
今回の場合は、Sさんとその息子であるお孫さんは実の親子ですので、扶養義務と相続関係を断つことはできません。なお、Sさんが息子(お孫さん)を連帯保証人として利用させないようにする方法は、法律的にはありません。お孫さんに意思を強く持ってもらうほかはありません。
次に、ご両親とSさんとの関係は、Sさんが婿養子であれば、養親子関係を解消することで、親子の縁、すなわち扶養義務と相続関係を断ち切ることができます。なお、Sさんが単なる婿であった場合には、そもそも扶養義務と相続関係がありませんので、切るまでもなく親子の縁はありません。
離縁とは
養子縁組後に関係を解消するときの手続きです。具体的には、養子縁組をした親と子の話し合いで合意し、養親子関係を解消する場合と、話し合いで合意できないときに家庭裁判所に養親子関係の解消を認めてもらう2つの方法があります。
家庭裁判所で離縁を認めてもらうわけですが、理由のない離縁はできません。認められるのは次の3つのみです。
「悪意で遺棄されたとき」
「生死が3年以上明らかでないとき」
「(虐待や長期的な別居、家業のために養子を迎えたが家業を継がなくなったなど)その他縁組を継続し難い重大な事由があるとき」
ちなみに、離縁の原因を作り出した側からの訴えは認められません。
(了。第1回から読む)
【プロフィール】
弁護士法人アディーレ法律事務所・古沢隆之弁護士/1985年、北海道生まれ。明治大学法学部卒業。遺言作成・執行、遺産分割等の相続問題も得意とする。
取材・文/藤岡加奈子
※女性セブン2022年8月11日号