相続は簡単ではない。子供を亡くした親の場合、その子供の配偶者との関係がこじれることもある。今回は、娘を亡くした70代女性の相談について、弁護士法人アディーレ法律事務所の古沢隆之弁護士が回答する。(全3回の第2回。第1回から読む)
【こんな状況です…】
娘(56才)がこの4月に急逝したため、孫(男・18才)を一時的に引き取りました。孫には父親S(60才)がいますが、自営の仕事が忙しく、子育てが疎かになる恐れがあったため、私たち夫婦(私79才、夫81才)が面倒をみることにしたのです。
孫は3月の高校卒業後、浪人して予備校に通っています。いまのところ、孫にかかるお金(予備校代、通学定期代、食費や衣服代などの生活費)はほとんど私たちが立て替えていますが、その父親がお金にルーズなため、不安が尽きません。以下についてお教えください。(主婦・79才)
【相談】
前述の通り、孫にかかるお金を私たち夫婦が立て替えていますが、Sからきちんと返してもらえるか不安です。孫はSの子供なのですから、Sがすべて負担すべきかと思いますが(口約束ですが、Sもそのつもりでした)、知人に聞いたところ、「成人である以上、必ずしも父親が面倒をみることは義務づけられないはず」と言われました。Sには支払い義務はないのでしょうか? そうすると、立て替え金を踏み倒される可能性もあるということでしょうか?
知人からはこうも言われました。「娘さんの遺産を夫と息子の二者間できちんと2分割したとしても、手持ちのお金に乏しいSは息子を適当に言いくるめて、息子の相続分から立て替え金を支払うことが予想される」。父親である以上、息子のお金には手をつけず、自分の財布から立て替え金を支払ってもらいたいのですが、孫が成人である以上(扶養義務がない以上)、それも望めないのでしょうか? 孫は自分にかかるお金の支払いをSに頼ることはできないのでしょうか(Sが拒否したら、孫は自分で払わなければならないのでしょうか)?
また、私たちの年齢や蓄えを考えても、孫の面倒をみるのは、せいぜい来年3月くらいまで(孫が大学に入学するまで)にしたいのですが、Sが父親の権利を放棄したら私たちが面倒をみなくてはいけないのでしょうか?