前出・加藤氏はこう指摘する。
「つまり、日本円が“ジャンク通貨”になったということです。似た状況が2019年のスウェーデンで見られました。同国の中央銀行は日銀と同じくインフレ目標2%を掲げてマイナス金利を設定しましたが、過度なクローナ安を招き、国内の物価が上がりました。国民はそれに猛反発し、『クローナがジャンク通貨になった』と中央銀行を激しく糾弾、同年末にマイナス金利は解除されました。
対する日銀は、円安が日本の利益になるとの考えに固執し、物価上昇の後の賃金上昇を期待しています。しかし、安い円で収益が圧迫されている企業は多く、賃上げは広がりそうにない。経済政策は本来、国民の購買力の向上を目指すべきですが、今の日銀は円安によって購買力を殺いでおり、本末転倒です」
加藤氏は、実質実効為替レートから「過去20年で最も通貨価値が下がっているのは日本」だという。その影響は年末にかけて物価上昇というかたちではっきり見えるようになると予測する。
※週刊ポスト2022年9月2日号