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「鳥害」の実態 農地では約半分がカラスによるもの、鳥の数自体は急増していない

カラスはどこにでも現れる(イメージ)

カラスはどこにでも現れる(イメージ)

 市街地ではカラスのゴミ漁りやハトのフン害に悩まされる人も少なくない。だが、もちろんこうした「鳥害」に悩まされるのは市街地に限った話ではない。農地での鳥被害はどのような状況だろう。

「被害の約半分はカラスによるものです。カラスは雑食性なので、果物も食べれば、種や野菜も食べる。つまり、どこにでも現れるのです。いまの時期は、トマトやトウモロコシの食害が多いです」

 と言うのは、農業・食品産業の研究開発機関である「農研機構」の上級研究員・吉田保志子さん。

「そのほかに多いのが、ムクドリ、ヒヨドリ、ハト、カモ類、スズメでしょうか。ムクドリは、群れをなして果樹園に飛来し、ももやなし、ぶどう、柿などを食害する、この時期活動が盛んな鳥です。

 市街地でもおなじみのスズメは、収穫期の稲穂につかまって中身を食べるほか、さくらんぼやブルーベリーも食害する。そしてハトは、大豆畑に播いた種を食べてしまいます」(吉田さん・以下同)

 水田を荒らすカルガモなどの水鳥は、最近では川に近い野菜畑に上がり込み、キャベツやブロッコリーを食害する例が増えている。

 野鳥は追跡が難しく、正確な個体数を把握することは不可能だというが、「近所のカラスが急増した」「ムクドリが大量発生した」といった話は各地でよく聞く。鳥の数は増えているのだろうか?

「全体数でいえば急増はしていません。野生動物の数はエサの量で決まると考えられています。カラスを例にとると、生ゴミが出しっぱなしで食べ放題という環境には、たくさんのカラスが集まりますが、それは一時的なものです。

 私たちが調べたところ、農村のカラスの数は1平方キロメートル当たり10羽ほどで、さほど多くない。夏から秋はその年生まれの雛が加わって倍増しますが、若いカラスの多くは冬を越せず、また元の数に戻るというパターンを繰り返しています。

 しかし、若いカラスは群れを作り、その時々でエサの多い場所に移動しているため、来られた地域の人には『急増した』ことになります。ほかの鳥も同様です」

 農作物を食べる鳥は、エサの多い場所を求めて長距離を移動する。ずっと居着くわけではないが、いつどこに現れるかわからないため、やはり近寄らせない対策が必要となるだろう。

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