役所や金融機関の手続き、スマートフォンの契約など、さまざまなシーンで求められる身分証明。本人確認書類として、顔写真付き身分証明証を求められる場合もあり、「運転免許証」や「マイナンバーカード」を利用している人は多いだろう。一方、それらを取得していない人は、身分証明をどう乗り越えているのだろうか。
「日本国パスポート」(2020年2月3日以前発行)といった選択肢もあるが、意外にも万能ではないため、不自由なこともあるようだ。普通自動車免許もマイナンバーカードも持っていない人に、身分証明事情を聞いてみた。
崩壊する“パスポート神話”
人材紹介会社に勤務する30代男性・Aさんは、マイナンバーカードも普通自動車免許も持っていないため、顔写真付き身分証明書は「パスポート一択」だという。
「マイナンバーカードを持ち歩くのは、リスクが高くて嫌だなと思っていて、まだ取得していません。万が一紛失したり盗まれたりしたら、個人情報が漏洩して悪用されてしまうのではないか、そう思うと二の足を踏んでしまいます……。だから、身分証明は基本的に健康保険証で、顔写真付きが必要ならパスポート。特にパスポートは必需品で、国内でも持ち歩いているくらいです(笑)。パスポートは黄門様の印籠みたいなもので、これさえあれば神だと信じていました」(Aさん)
だが、そんな“パスポート神話”も崩壊しつつある。2020年2月4日以降に発行された新パスポートには住所記載欄がなくなっているため、顔写真付き身分証明証としての機能がなくなってしまったのだ。旧パスポートの有効期限が迫るAさんは最近、その事実を知り愕然としたという。
「僕の場合、旧パスポートの有効期限は残り3年。まだまだ猶予があると思っていたら、スマホの契約時の本人確認書類に、パスポートと追加で補助書類として公共料金領収証か住民票が必要だったり、そもそもパスポートが除外されていたりして、すでに影響が出ています」(Aさん)
普通自動車免許もマイナンバーカードも、当面は取得する気がないというAさんは、いま別の選択肢を考えているという。
「いまは『原付免許』を取ろうかな、と考えています。普通自動車免許と違って、適性試験と学科試験、実技講習を受ければ、最短1日で免許取得が可能だからです。費用は8000円くらい。たとえ原付に乗らないとしても、身分証明書として使えるのであれば価値がありそうです」(Aさん)