時代とともに変わってきた音楽視聴スタイル。昨今はサブスク形式の音楽ストリーミングサービスが台頭し、主流になりつつある。だが、かつて青春時代を振り返ると、「カセットテープ」を擦り切れるほど聴いていたという世代も少なくないだろう。今ではカセットデッキを持っておらず、聴くことすらままならないにもかかわらず、愛着があるアイテムであるだけに、なかなか処分できない人もいるようだ。そんな「捨てられないカセットテープ」の思い出を聞いた。
「マイベスト版」に手書きのインデックス
メーカーに勤務する40代男性・Aさんは今夏、実家に帰省した際に置きっぱなしになっていた古いカセットテープを片づけるように親から言われた。その中には、Aさんが初めて買ったカセットテープもあった。
「小学生の時に買った『ドラゴンクエストIIIそして伝説へ…』のサウンドトラックです。A面がオーケストラで、B面がファミコン(ファミリーコンピュータ)音源そのままのサウンドが収録されているのですが、当時はそれこそ擦り切れるほど繰り返し聴きました。こういう思い入れのあるものはどうしても捨てられないですね」
Aさんの部屋からは、仲が良い友達と交換していた思い出のカセットテープも見つかり、懐かしさのあまり捨てるに捨てられずにいるという。
「レンタルCDからお気に入りの曲を入れた“マイベスト版”のカセットテープを友達とよく交換していました。そのテープがまだ何本か残っていたんです。友人の手で書かれたカセットテープのインデックスラベルを見ながら、『この人はどういう想いでこの曲を入れたのかな』とか、いろいろ想像をめぐらせていると、あっという間に時間が過ぎました。
他には、カセットテープに自分の声を吹き込んで、カセットを交換し合う交換日記ならぬ“交換カセットテープ”をしていたこともありました。そうした思い出をカセットテープ好きな20代の同僚に話すと、『聞いてみたい』と興味津々の顔をされましたが、恥ずかしいので丁寧に断りました(笑)」(Aさん)
捨てるのはもったいないと思ったAさんは、カセットテープを再生するための「カセットデッキ」がほしいと思っているという。
「実家のカセットテープを見ていると、処分する前にもう一度聴きたいという気持ちが出てきたんです。今はデッキがほしいと思っているところで、買ったら、同世代を呼んで、お酒を飲みながら聴きたいですね」(Aさん)