30代男性「後輩におごる人、おごらない人が混在していた」
2000年代後半から2010年代前半に、都内の私立大学に通っていた男性・Cさん(36歳、IT企業勤務)は、スキーサークル出身。当時の先輩、後輩の関係についてこう語る。
「新歓以外でも、1年生に先輩がおごるという慣習はありました。僕も1年生の時は、全額おごってもらっていたので、自分が2年生になった時には、後輩に全額おごるようにしていました。自分以外の同期も、そうだったと思います。
僕の場合、一人で複数の後輩を連れていくのではなく、何人かの同期と一緒に後輩を連れていくというケースが多かったので、金銭的負担が大きすぎると感じたこともなかったです。後輩分の手持ちがない時は、自分より多く払ってくれた同期にあとから差額を返す、ということもありました」(Cさん)
Cさんも、「おごる慣習が一般的だったので、おごる、おごらないを損得で考えたことはなかった」という。しかし、3年生になった時、「おごられる」後輩側の意識の変化を感じるようになった。
「僕が3年生になると、1年生の中には、会計時に少額でも出そうとする人が出てきました。僕が『ここはいいから』と言っても、『いや、これだけの金額を先輩に払ってもらうのは悪いですから』などと、どうしても払おうとする。『おごる』ことが、必ずしも相手に良い感情を抱かせるとは限らないんだな、と感じたのを覚えています」(Cさん)
Cさんがおごっていた後輩も、年次を重ね上級生になると「おごる」立場になるはずだが、中には「おごらない」人も現れ始めた。
「私より下の代になると、後輩におごる人、おごらない人は混在していましたね。そうして、だんだんと、『先輩が必ずおごる』という慣習もマストではなくなってきたように思います。後輩世代は“先輩に借りを作りたくない”のか、全般的に“自分たちは自分たち”というスタンスがあったようで、その価値観はおごる、おごらない以外の部分でも感じました」(Cさん)
20代女性「先輩とも後輩とも、ほぼ割り勘です」
現役女子大生のDさん(22歳)は、体育会系部活に所属するが、先輩のおごり文化は「ほとんどない」という。
「以前はあったみたいですが、私の周囲に関して言えば、おごり文化は、ほぼ残っていないです。私が入学した時から現在まで、先輩とご飯や飲みに行った時は、ほぼ割り勘。社会人になったOGの先輩からはおごってもらうことが多いですが、学生同士なら年次関係なく、おごり・おごられはありません。1年生の頃から割り勘だったので、今も後輩の1年生とご飯に行っても割り勘です。例外として、新歓のイベントの時だけは、部員で新歓費を出し合っているので、おごりになります」(Dさん)
もちろん、大学や部・サークルによって、おごり事情は異なるだろうが、「先輩はおごるもの」「後輩はおごられるもの」というかつての風習は、時代の変化とともに変わりつつある。特に30代より若い世代では、“おごり文化”を経験していない層も増えつつあるようだ。