「私には貯金の習慣がない」と公言してきた『女性セブン』の名物記者・オバ記者こと野原広子さん(65才)。とかく50~60代の女性は、夫の定年退職や親の介護などでお金が入り用となって苦労するが、野原氏は「まとまったお金がなくてもやりくりできるし、毎日、幸せに暮らせている」と言う。行動経済学に詳しい昭和女子大学現代ビジネス研究員・橋本之克氏との対談形式で、オバ記者の消費行動をひもとく。【全3回の第1回】
橋本:今回、野原さんの“お金哲学”を探るにあたって、3つのお題(実験)をご用意しました。いずれも、米国コロンビア大学ビジネススクールのシーナ・アイエンガーという教授の著書【*】に載っているもので、人間の本質や傾向が見て取れる、行動経済学の視点からも興味深いお題です。
【*『選択の科学 コロンビア大学ビジネススクール特別講義』(シーナ・アイエンガー著、櫻井祐子訳、文春文庫)。20年以上の実験と研究を基に「選択」が持つ力が論じられている。なお、同書でQ1、2の通貨単位は「ドル」ですが、本対談では「円」表示にしている】
【Q1】いま1万5000円もらうのと、1か月後に1万8000円もらうのとでは、どちらを選びますか?
橋本:いきなりゲンキンな話から始まって恐縮ですが、野原さんの目にはどちらが魅力的に映りますか?
オバ記者:これは即答。もちろん、「いますぐ」もらえる方です。馬の鼻先ににんじんをぶら下げるようなもんですよ。
橋本:やはり、「もらうならいま」なんですね。
オバ記者:もちろんよ! 無条件でもらえるなら早い方がいいよ。相手の気が変わらないうちに。1か月の間に何が起こるかわからないんだから、絶対にいま。先生だってそうしません?
橋本:私だったら数字の大きさで判断します。ひと月で3000円増えるなら、そちらです。
オバ記者:人を信じてますね~。相手が正気に戻ったらどうするんですか。
橋本:ハハハ。でもね、早くもらえる方をチョイスするのは本能に従った選択で、この実験に答えたほとんどの人が「いま」を選んだそうです。
オバ記者:でしょ。“現金とっぱらい”って魅力的だもの(笑い)。
橋本:この実験結果は行動経済学的に言うと「時間割引」という言葉があてはまります。人はすぐ手に入る報酬ほど高い価値を感じ、入手が遅れるほど価値が減少するのです。
オバ記者:へぇ~。