いつか重荷になる日が必ず来る
近くに住んでいれば孫育ての戦力とされることもある。自転車で15分ほどの場所に娘一家が住んでいる松崎淑子さん(仮名・65才)が言う。
「娘夫婦には小学1年生、保育園児2人の3人の子供がいます。近くに引っ越してきたときは、夫と“いつでも孫の顔が見られるね”と喜び合ったのですが、いまは苦痛。娘が召し使いに言うようにいろんなことを頼んでくるのです。毎朝、早くから娘宅に行って保育園への送りをし、小学校へ登校する孫を見送ったら、洗濯機を回して干す。終わったら、娘に頼まれた買い物を済ませ、冷蔵庫に入れるところまでします」
いったん自宅に戻った松崎さんは、また自転車をこいで孫一家の家に向かうという。
「美容師をしている娘の状況によっては、夕飯を作っておいてと頼まれる。しかも、お婿さんと小学生、1才の孫では食べるものも違うので最低3種類は必要。車の免許がないので自転車で行き来していますが、坂道がきついので15万円する電動アシスト自転車を買いました。孫に手がかかるからパートも辞めて収入がなくなったのに、お金はどんどん出ていく一方。私と夫の食事は日に日に質素になっています」
よかれと思い共働き夫婦を手伝ったが最後、“無料家政婦”にさせられたようだ。電車で1駅隣に長男夫婦が住んでいる千田淳子さん(仮名・67才)は、残業になったからと息子の妻に頼まれ、自転車で保育園から孫を連れて帰ったときのことを振り返る。
「息子宅に着いたとき、仕事から帰ってきたお嫁さんと遭遇しました。孫が“ママ!”と立ち上がろうとしたら、バランスを崩して自転車ごと転んでしまった。止まる寸前だったのでけがをするほどではなかったのですが、お嫁さんは孫の名を叫んで金切り声。抱き上げてそのまま部屋に入ってしまい、自転車とともに倒れたままの私はその場に残されてしまいました」