なぜ繰り返されるのか
振り返れば、みずほ銀行は発足直後の2002年から大規模なシステム障害を引き起こしてきた。2002年4月には約250万件の口座振替処理の遅延などが起き、東日本大震災直後の2011年3月には為替取引処理の遅延やATM利用停止という事態に陥るなどして、いずれも金融庁から業務改善命令が出された。
そこで、約4500億円もの開発費用をかけて2019年に新しい基幹システム「MINORI」を完成させたが、それでもトラブルは続いた。
とりわけ2021年になってからはシステム障害が相次いで発生。
口火を切ったのが2月28日に全国の8割のATMが停止、顧客のキャッシュカードや預金通帳がATMに飲み込まれるなどの大混乱だった。現場対応が遅れたこともあり、障害発生から数時間後もATMの前から動けない利用者が続出。3月にはATMなどで3度の障害が続き、金融庁は立ち入り検査を進めたが、その最中の8月から9月にかけても障害が頻発。新システムに移行後も、大小合わせて10回以上の障害が発生してきたことになる。
なぜ、みずほ銀行でばかり、こんなにもトラブルが繰り返されるのか。
経済ジャーナリストの森岡英樹氏は「その要因としては、主に2つの面があると考えられます」と指摘する。
「ひとつは、システムの構造に起因するもの。みずほの新勘定系システム『MINORI』は、富士通、日本IBM、日立製作所などで構築されるマルチベンダー方式で、システムが複雑になっているのです。
もうひとつは、障害についての事前・事後の対応力の問題。第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行の3行合併の弊害からガバナンス問題が長く尾を引き、障害発生時にも経営層への連絡が大幅に遅れた。そうした対応の遅れが被害の拡大に拍車をかけたと考えられています」
「企業風土」の問題も大きいとされる。
昨年11月の金融庁の業務改善命令では行内での「言うべきことを言わない、言われたことだけしかしない姿勢」がトラブルを引き起こした真因とまで断じられている。
「金融庁はシステム上の問題のみならず、企業風土の刷新の必要性にまで踏み込み、みずほの経営体制そのものを疑問視した。その結果、トップが引責辞任し、若手中心のプロジェクトチームを立ち上げるなどの改革に取り組んでいますが、企業風土は一朝一夕に変わるものではなく、困難な道となります」(森岡氏)