今年9月、著名ランナーの川内優輝氏がTwitter上で、市民マラソンの定員割れが相次いでいる理由について、アンケートを取ったところ、1万票を超える回答が集まり、「参加費が上がりすぎ」が45.3%でトップという結果になった(次点は「直前で中止の可能性があるから」)。こうした結果からも、各大会の参加費の値上げが、定員割れの大きな要因となっていることは間違いないようだ。
具体的に見てみよう。大阪マラソンは、通常開催された直近大会(2019年12月)では11500円だったエントリー費(必須の寄付等を含む)が、今回は1万9100円に値上げされている。NAHAマラソンは前回(2019年)8000円から1万2000円に、京都マラソンは前回(2020年2月)1万5000円から1万8000円に、松本マラソンは前回(2019年)1万800円+手数料だったのが1万2000円+手数料となっている。
ちなみに、参加費全国トップは東京マラソンの2万3300円(当選倍率非公表)、次点は横浜マラソンの2万1000円(同1.1倍)となる。
大会側が値上げする名目の多くは、コロナ対策や「安全に走ってもらうため」の警備費増大だ。
スポーツツーリズムに詳しい國學院大學人間開発学部健康体育学科准教授の備前嘉文氏は、「受容できない値上げが起きれば、市民マラソン大会の参加者は減る可能性は高い」と話す。備前准教授は参加費1万円の大会に出場したランナーに調査を実施し(2048人から有効回答)、値上げが起こった際に「高すぎる」と感じる金額は1万438円だという結果を導き出している。
「もちろん、現在、各地で起こっている参加者減は、GPSを用いるオンライン大会の普及で遠方からの出場希望者が減っていることなど、他の要因も関係しています。しかし、大会参加と旅行を兼ねる『スポーツツーリスト』も少なくなく、彼らは宿泊などの旅費を含めた大会参加費を日ごろから少しずつ用立てているため、受容できない値上げが起こった際、参加を取りやめる可能性があります」(備前准教授)
食品や電気代など幅広い分野で「値上げ」が話題になっているが、マラソン参加費も例外ではない。そしてその値上げが、市民ランナーの“マラソン大会離れ”に直結している側面もあるようだ。(了)