コロナ禍で大きな転換点を迎えたのが「カラオケ業界」だ。これまで歌を歌って楽しむ場だったのが、密閉空間であることなどが敬遠されて、客足は大きく減った。需要が半減したカラオケ業界はどのように生き残り策を講じているのか。カラオケ評論家の唯野奈津実氏が分析する。
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コロナ禍は、これまで順風満帆だったカラオケ業界にとって、かつてないほどの“逆風”となりました。
全国カラオケ事業者協会による「カラオケ白書」の推計によれば、カラオケの利用人口は、コロナ禍以前の20年間は、4700万人前後で推移していました。ところが、コロナ禍に入った途端、約2620万人と大きく落ち込みました。カラオケに対する風評被害が大きな要因と考えられます。
そこでカラオケ店舗側が打ち出した対策のひとつが「テレワークプラン」でした。つまり、「歌うだけでなく個室としても使える場所」として集客する戦略を採ったわけです。風評により「カラオケ目的」の集客の自粛を余儀なくされた店舗側の打開策の一環です。
今年に入り、ようやく風評被害も落ち着いてきました。“カラオケは危険”とする誤解がこのまま払拭されていけば、客は徐々に戻ってくると考えています。
コロナ禍前から、カラオケのコンテンツはオンラインを巻き込みながら進化してきました。AIによる採点機能をはじめ、コアなユーザーは自分の歌声や歌う姿を店で録音・録画してネット上の専用サイトに公開して楽しんでいます。撮影した歌唱動画に遠隔地の友人がさらにコーラス等を重ね撮りする「コラボ撮影」も可能です。ウィズコロナ時代にも生かされる最先端カラオケ文化のひとつといえるでしょう。