「サタン」の存在を恐怖心でもって教え込む
それに対して、今、問題になっている旧統一教会が行うマインドコントロールは、長きにわたってじっくりと「恐怖心」を植え付けるもので、騙されていることに気づくこと自体が大変です。
私も最初に教団名を隠されたまま教団の関連施設に連れていかれて「聖書はこの世で一番読まれているベストセラー」などといわれて、神様のことを教えられました。そして入信したわけですが、その後、マインドコントロール下にあることに気づくまで、約10年もの月日がかかりました。
それだけの時間がかかった理由はやはり「恐怖心」です。教団の関連施設ではよく「エクソシスト」「オーメン」などの悪魔(サタン)が登場する映画を見せられます。なぜなら、教団が一番心に植え付けたいのは「サタン」による恐怖だからです。
もちろん、すんなりと神様を信じてもらえればよいですが、なかなか無宗教である日本人にそれは難しいのです。こうなると、“現人神”である文鮮明教祖の存在を信じさせることができなくなります。そこで、その反対の立場であるサタン(悪魔)の存在を信じるように仕向けます。裏の存在であるサタンへの恐怖を持たせることで、表にいる神様を信じさせようとします。
今となっては、大変申し訳ないのですが、私が教団内で講師をしていた時には、連れてこられた人がなかなか「神様」の存在を信じない時には、サタン(悪魔)の存在を恐怖心でもって、まずは教え込むようにしていました。
恐怖心を植え付ける。これがマインドコントロールの重要な要素であると考えています。振り込め詐欺では「犯罪に巻き込まれている」などの言葉で、相手に怖さを覚えさせて、金銭を出すように仕向けます。また旧統一教会の信者らが行った霊感商法も「このままだと悪因縁によって病気になる。事故に遭う」などという、霊界の恐怖を覚えさせてお金を出させるのです。教団を出てから詐欺や悪質商法を取材するたびに、手口の共通性に驚かされます。
【プロフィール】
多田文明(ただ・ふみあき)/詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。『ついていったらこうなった』(彩図社)はテレビ番組化。また、旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)。