近年、鉄道ファンが大いに注目しているのは、2027年の開業をめざしているリニア中央新幹線だ。鉄道ジャーナリストの渡部史絵さんが言う。
「最高時速500kmのリニアは東京-名古屋間を最速40分で結びます。試乗会で新型車両に乗ったとき“速いというレベルではない”と感じました。想像以上に揺れも少なく快適で、まさに近未来の乗り物。一日も早く開業して、より多くの人に、超高速の鉄道旅を満喫してほしい」
鉄道ファンの熱い期待を背負い、日々超電導リニアの技術開発に励むのが、JR東海リニア開発本部に勤務する富澤裕子さん。2010年に入社してすぐに、山梨実験センターに配属された。
「技術職としては、リニア実験センター初の女性社員でした。私自身は、初の女性ということよりも、やりたかった仕事に就けることの方が感慨深かったのですが、周囲の男性社員からは“夜道は暗いから、気をつけて帰りなさい”と気遣ってもらったり、職員皆で帰る日もありました」
富澤さんの仕事は「超電導磁石」の開発。強力な磁力で車両を浮かせ、超高速走行を実現する、リニアの生命線となる技術だ。
「もともと大学で超電導の研究をしていたこともあり、新技術のさらなる改良に向けて、社内の“第一人者”として、新たな超電導磁石の開発を任されたことがあります。メンテナンス性に優れ、より一層の信頼性の向上やコストの低減につながる新技術で、現在はその技術を活用したリニア車両が山梨リニア実験線で走行しており、メイン技術開発項目の1つになっています。研究にまい進し、社会的にも大きな意義を持つ仕事をやり遂げられたときは、特に大きな達成感を得ることができました」(富澤さん・以下同)
そんな富澤さんは、今春、3年間の育児休業等を終えて復職したばかりだ。いまのJR東海は復職を希望する社員を支える制度が整っており、育児休業等を取得した社員が復職しやすい風土だという。同じくJR東海広報部の秋岡正容さんが語る。
「私は入社6年目で、同期に結婚したり、子供が生まれたりする人が増え始める年代です。当社は男性社員も育児休業等の取得が当たり前で、男性社員の半数近くが、育児休業等の取得経験を持っています」