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気づけば数百万円の商品を契約… 「浅慮」状態にして冷静な判断力を奪う催眠商法の手口

会場では無料マッサージなど、徹底した尽くす行為

 実はこの手法を巧みに行ったのが、戦後最大規模ともいえる2000億円を超える巨額詐欺事件の舞台となった「ジャパンライフ」でした。

〈ジャパンライフは環境を巧みに操りながら、高齢者を誘導していました。考えて頂きたいのが、もしネット上の通販サイトで、数百万円もの磁器治療器が売られていたとして、それを見ただけで誰が買おうとするでしょうか? いくら説明文がすばらしくても、簡単には申し込みのボタンを押さないと思います。つまり通常の状況下では、誰も購入しないものを、ある環境に引き入れることで、簡単に買わせることができてしまうのです〉

 ジャパンライフでは、誘った高齢者に対して丁寧な説明を行い、集会には社員らの車で送り迎えをします。連れ込まれた会場では無料でマッサージが行われて、健康食品なども配るなどの徹底した尽くす行為が行われます。

〈こうした溢れかえる親切や優しさ、尽くしのなかで、レンタルオーナーを紹介されて、数百万円もする商品の契約をしてしまいます。本人としてはよく考えて契約したつもりかもしれませんが、会場の雰囲気に飲まれて、客観性に欠ける判断をして契約をしてしまっているのです〉

 旧統一教会では、このやり口をはるかに超えるような、感動的で楽しく、セミナーに来てよかったと思わせる演出しながら、浅慮の状態にして判断力をそぎ、教義を教え込みます。しかもそれを連日にわたって行うのです。そして連れ込まれた人たちは、教団の意のままに心をコントロールされてしまうのです。

 これは、勧誘した人を信者にさせるだけでなく、信者らの信仰強化をするのにも使われます。その結果、身の丈を越えた多額の現金を出させることにもつながってしまいました。それが、今の旧統一教会による高額献金という社会的問題の原因の一つにもなっています。

【プロフィール】
多田文明(ただ・ふみあき)/詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。『ついていったらこうなった』(彩図社)はテレビ番組化。また、旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)。

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