年金生活になると、日々の暮らしにかかわるお金もダウンサイジングする必要がある。厚生年金加入者の年金受給額は、夫婦で平均月22万円ほど。たとえ貯蓄があっても、気づけば出費がかさんで毎月赤字──なんてことも十分あり得る。定年後になると、現役時代とは異なる金銭感覚を持つ必要があるだろう。
たとえば子供への援助も慎重にしたい。現在、子供が親から支援を受けて省エネ等住宅を購入する際には、最大1000万円まで非課税になる。だからといって「頭金を出してあげる」などというのは考えものだ。ファイナンシャルプランナーの丸山晴美さんは、定年後のお金の使い方について注意を促す。
「よほど資産がある人は別ですが、無理をして援助すると自分たちの老後資金がなくなってしまいます。子供のためにお金を使うのは、お祝いのときだけで充分。“与えすぎない”“心配しすぎない”“見栄を張らない”の3つの『ない』が大切です」
初孫の誕生を喜んで高額なプレゼントを渡してしまう人も多いが、心配なのはその先。介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんが語る。
「孫は結果的に何人生まれるかわかりません。1人目に高額なものを渡すと、2人目以降にも渡さないわけにはいかなくなる。お祝いごとでも差をつけられないので、総額で見るとものすごい負担になります」
子供や孫の「お財布」にならないよう心したい。定年はこれまでの出費を見直すいいチャンスでもある。経済ジャーナリストの荻原博子さんは、こう言う。
「例えば不要なサブスクリプションをやめる、あまり見ていない動画配信サービスを停止する。現役のときに使っていたクレジットカードの年会費もバカにならないので、定年になったら整理するべきです」