厚生年金は「マクロ経済スライドによる減額」の期間延長へ
現在議論されている改正案では、この「マクロ経済スライドによる減額」がさらに大きくなる可能性が浮上しました。
現行ルールでは、マクロ経済スライドは厚生年金の報酬比例部分は2025年まで、国民年金は2046年まで続く見通しとなっています。今回の改正案では、それをどちらも2033年までとする「マクロ経済スライドの期間統一」が検討されているのです。
厚生年金を受け取っている人にとっては、現行ルールから8年も減額が延長されるわけで、当然、それだけ年金額は減ることになります。厚生年金のマクロ経済スライドが2025年までのパターン(現行ルール)と2033年までのパターン(改正案ルール)で、2033年時点の年金額を比較すると次のようになります。
【現在の年金額(2019年)】
2階部分=厚生年金:9万円
1階部分=基礎年金:6万5000円
→合計15万5000円
【現行ルールでの2033年の年金額】
2階部分=厚生年金:8万5300円
1階部分=基礎年金:5万7300円
→合計14万2500円
【改正案ルールでの2033年の年金額】
2階部分=厚生年金:7万9300円
1階部分=国民年金:5万7300円
→合計13万6600円
今と比べると、月額約2万円もの減額、年間20万円以上も減らされます。
令和元年の家計調査によれば、年金暮らしの夫婦2人世帯の支出は月額27万929円となっています。それに対して、公的年金等による収入は23万7000円。現状でさえ、年金だけでは生活できないのに、今後はもっと厳しくなっていくのです。
(第2回に続く)
【プロフィール】北村庄吾(きたむら・しょうご)/1961年生まれ、熊本県出身。中央大学卒業。社会保険労務士、行政書士、ファイナンシャルプランナー。ブレイン社会保険労務士法人 代表社員。YouTube「年金博士・北村庄吾の年金チャンネル」で、「年金! 天国と地獄」(https://youtu.be/XGPzmcRoLXM)を配信中。