1980年代半ば、大学入学を控えた時期に、旧統一教会に勧誘されて入信した竹迫さんが振り返る。
「当時は教団が活動を劇的に展開するのに若い人の力が必要で、若者ゆえ人生経験や知識が足りず勧誘しやすい側面もありました。学生運動が盛んな時代だったので、反共産主義を掲げてそこから日本の政治家を取り込もうとする教団には、学生運動に対抗するために若者を集めたいという思惑もありました」
当時の旧統一教会は路上勧誘がメインだった。路上で所在なげにする若者に「人生の勉強をしましょう」と声をかけ、勧誘拠点であるビデオセンターに誘い込む。そこで十戒や天地創造など聖書を題材にした映画を見せて「聖書を理解するために勉強会をしよう」と持ちかけ、教団の教義である統一原理を教えていた。
すでにその頃から、教団は女性をターゲットにしていたと竹迫さんが指摘する。
「私が入会した頃に内部で言われていたのは、『銀看保を狙え』ということ。銀行員、看護師、保育士は真面目でホスピタリティーが高く、布教の戦力になりやすいから勧誘しろと指導されました」
竹迫さんは1986年に旧統一教会を脱会して脱会支援活動に転じた。その頃、よく耳にした教団の勧誘スローガンは「アパ勤女を狙え」だ。
「『アパ勤女』とは、アパートでひとり暮らしをして社会人として勤務する女性のことです。ひとり暮らしだと家族の目が届かず、生活に異変が生じても察知されにくい。当時は、いずれ結婚して子供がほしいものの、日々仕事に追われて出会いが少なく、自分の人生は本当にこれでいいのかと悩み始める20代後半の女性が増えていた。そこに目を付けたのが当時の統一教会でした」(竹迫さん)